コミケ72東京旅行のたび5 二日目 はじめての夏☆コミケはドキドキ東京砂漠編

前回のまとめ
 裸の大将でもないのに線路内をうろつく人がいたせいで、急遽電車が止まったりしたものの、なんとか無事に再会できた我々とめづさん。
 よもやま話をしながら飲茶の食べ放題をして満腹たらふく。池袋のいけふくろうに衝撃を受けたりコンビニを探したりした後、ホテルで疲労困憊して寝ていると、急遽夜中に地震発生。
 一瞬死ぬかと思ったがぜんぜん大丈夫だった命。むしろ次の日の朝は無事に起きることができるのだろうか。
 ピピピピ。
 ピピピピピ。
 ……。
 控えめに鳴り響くベッドサイドアラーム。
 まだ寝たい。
 すんげえまだ寝たい。
 しかし、もし時間に間に合わなかったら、これほど痛々しいことはないでしょう。サークルチケットで早めに入ることができなかったら一般参加でえんえん並ぶ羽目になり、結局はもっと疲労困憊することになってしまうのです。
 あううあうううよっこいしょーと起きる我々。ぼーっとしながらテレビをつけると北海道ではやっていない朝番組(たぶん)がやっていました。
 留さんが仕度をしている間、つめたいスパゲティサラダを食べながらテレビを見る私。
 やっぱり夜中に地震が来たようです。千葉で揺れていたらしいですが、時間はだいたい合っていたので私を焦らせたのはコレでありましょう。
 留さんは眠剤を飲んで寝てたので気付かなかったそうです。どうして医療関係者は気軽にケミカルを飲むのだろうか。
 テレビでは夏休みの企画として「小学生にいま流行っていることを聞こう!」というのをやっていて、それによると「どんだけぇ~」はもう古く、今は「どんだけぇ~」と言ったら「いかほど~」と返すそうです。小学生アタマいいなあ……。
 化粧をしていると、留さんが「眉毛を描くラインで重要なのは上ではなく下らしいよ!」とか教えてくれたり、髪にワックスをつけてくれたりしました。「このワックスはツヤが出るんだよ!」と見事にくるくる仕上げてくれる留さん。人の髪なのにすげえ手馴れたものです。実は留さんはオシャレ好きさんなのです。うん僕も見習おうとは思っているんですがでも服を着るのって面倒でそんで重ね着とか耐えられなくてそのー。
 結果、意外とスムーズに仕度を終える我々。しかし肩にのしかかる全荷物。七時チェックアウトって辛すぎです。今どきどんな温泉地でもそんなハードスケジュールありえません。
 しかし今日はコミケ当日。どんなに列車が込むかわかったものではありません。初心者としてはどのみち早めに行くべきでありましょう。
 おもいー、おもいーと思いながら荷物を持って列車に乗り込む我々。これから二回ぐらい乗り継ぎしなくてはなりません。
 しかし、今日も暑い。おーさかさんの言葉「東京は朝8時から28度とかある」を思い出します。正しすぎる言葉に泣きそうです。
 積みあがる疲労にまず目が悲鳴を上げたので、コンタクトも列車内で収納。もう見かけより命が大事です。
 しかし、思ったよりも込んでいない車内。はあよかったー。と一息ついて列車を降りました。

 ざん!(笑)

 おお、コミケってかんじー。

 帰りのキップも買って改札を出ると、なにやらでかい人並びとサンクス(コンビニ)が。

 めづさんの言っていたとおり、サークルの並ぶところにはスタッフがカンバンを持っています。

 とりあえず脱水で死んだら困るので、サンクスでお茶とか買う我々。予想してはいたものの、けっこうな人口密度です。レジにはびっしりと店員が、十人以上はいそうです。ここは三日間で一体どのくらい稼ぎ出すのでしょうか。

 準備もできたのでサークル列に並びます。どきどき。

 すた。

 すたた。

 すたたた、たたた……?

 全員早足。

 えええ?

 すてててて。

 ちょっとまってちょっとまって、みんなそないに焦らんでも時間はまだたぶん!

 すてててて!

 車と一緒で、周りに速度を合わせて歩かないと迷惑というものです。まあでも、これ別に無理のある速度ではぜんぜんないのです。

 ただ暑いのと私が重い荷物を担いでいるのと、そんで早歩きの距離がなんか異常に長いことが致命的なのです。

 わああああん、わああん!

 コミケの人間の体力はアスリート並みか!(それか単に若さか)

 えんえん早歩きして、なんかでかい階段のある橋を登りきると建物が見えました。玄関に入る前にサークルチケットを見せます。

 通過は一瞬で終了。サークルチケットってありがたみがあるんだかないんだか微妙です。

 そんでまた中に入ってからも、早歩き。もうあのちょっとお願いですから休ませて。

 しかしもう、あまり時間がありません。段取りもわかりませんし九時半までにはブースにいたいところです。

 そこで「込んだら困るから、今のうちトイレに行ってくる」という留さん。確かにコミケが始まると込むにちがいありません。

 「じゃあ、遅くなったら困るから先に行って仕度してるよー」と私は先に向かうことにしました。

 スペースの大体の場所すらわからずに、スタッフの人に聞く私。エスカレーター降りて右らしいです。はあはあ聞いてよかった。このペースで無事に着けるんでしょうか。荷物重いなあ。

 会場広っ。

 ええとー、ええとー、あのへんかなー。

 だいぶ奥のほうみたいですが、多分封神演義とかは数が少ないから、すぐに見つかるでしょう。はあはあ。

 ……。

 藤崎竜先生すいませんでした。

 わあああ、封神多いよ! どこだかわかんないようううー!

 記号とかはこの辺のはずなのに、数字を追っていっても見つからない。

 ぐるぐる二周くらいして、やっと数字の法則を掴む私。それに机についている数字ちっちゃすぎだと思うんですが慣れてないせいか。

 ……。

 見つかった瞬間、金縛りにあいました。

 事務机があって、その上に三つ、畳まれて折り重なった折りたたみ椅子。

 問題は、その上にある恐ろしい数のチラシ。

 待って待って、何百枚あるのってくらいありますが!

 ……。

 うん、一人じゃ無理。

 なんというか、精神的に無理!

 すっかり疲労困憊して、自分のスペースを避けるように逃げる私。

 ここは留さんに電話です。ぴぽぴぽぴー。助けて留さん!

 出ない。

 ……。

 もっかい電話。

 出ない。

 ……。

 ちょっともう帰りたくなってきました。

 くらっとくる意識。いかんこのままでは貧血で倒れます。疲れて座り込むと、「床に座らないでくださいー」とスタッフの人。そんなことを規制するよりどうかあのチラシを規制してくださいませんか。

「すみません、具合が悪くて」

 というと、

「そうですか」

 とだけ言って即座に去るスタッフ。なんかやなやつです。

 暑いし疲労は溜まってるし怒られるしなので、立ち上がってふらふら歩く私。

 何分かごとに電話すると、やっと留さんがつかまりました。

「スペースが見つからない」という留さん。「スペースはみつけたが、その上のチラシを一人じゃよかせられない」と言う私。

 とりあえず合流して、なかよくブースに向かいます。あいかわらず山積みになっているチラシにまた眩暈を起こす私。

 左側のサークルさんはまだ来ていないようなので、留さんが右のサークルさんに挨拶してくれました。

「こんにちはー、よろしくお願いします」

 ……。

 返らぬ返事。

 うーん、殺伐とした世の中、まあこんなこともあるでしょう。

 むなしくチラシを片付け始めると、遅れて一人だけ「こんにちは、よろしくお願いしますー」と返事してくれました。四、五人いたんですがきっとおしゃべりをして気付かなかったに違いありません。それにきっと違うサークルの人なのでしょう。声かけたらなんか一瞬みんな反応していたのなんて気のせいです。

 ともあれ二人で片付けるチラシ。見れば見るほど膨大です。サイズが揃っていないのと、うっかり手を切りそうになるのが扱いに困るところ。

 BLのかほり溢れるチラシをなんとかまとめて袋に入れ、下に置きます。そんでやっと折りたたみ椅子に座ることができました。ふひー。

「あっそうだ、見本誌出さなきゃ」

 実は途中でスタッフさんが来てくれたのですが、以上のような諸事情で出せなかったので、向こうのサークル受付でじかに出してくださいと言われていたのでした。

 机の下に置いてあった本のダンボールを、空港でひっかかったカッターを使って開きます。こんな遠いところまで置きに来てくれて、ありがとうプリントウォーク(印刷所)のひと!

 へええー仕上がりはこんな感じなのですなー。元原稿よりも美麗です。優秀な人たちですプリントウォークのひと! でも自分のページはなんか嫌なので見ない私。未だにほとんど見ていないです。いや作るとき腐るほど見たし。

 回らない頭で記入をし、シールをぺたんと貼ります。「ついでにこのチラシどうすればいいのか聞いてきてくれる?」と留さんに言われたので、私は本と任務を携えて並びました。

 スタッフのひと(たぶん三、四十代の男の人)はとてもいい人でした。

 ゆっくり親切です。

 我々の本が別にえろくないことをきちんと確認し、見本誌票を確認し、あのチラシをいかにせむかの質問にもきちんと教えてくれました。

「あそこにシャッターがあるでしょ? あそこがねー、コミケが開くと開くんですよ。そこを進んで右に行くと、捨てるところがあるんですけどおじさんがいてねー。そのおじさんが「いい」って言わないと捨てちゃダメなんですよ。それがタイミングがあって、始まってから暫く経ってから行った方がいいかな。そこがダメだったら向こうの廊下側の、エスカレーターの近くにも捨てるところがありますよ。でもそこも捨てちゃダメな時はダメなんですけどね」

 親切な説明に感謝しつつも、私は後ろで並び始めた三、四人の列が気になって仕方がありませんでした。かといって丁寧なその口調を「込んでますから」と押しとどめることもできず、私は話の切りを狙って笑顔で「わかりました、どうもありがとうございました」と言って去りました。

 私が離れた後、スタッフさんはそんなに並んでいたことにはじめて気付いたらしく、列を見て「ギョッ」とした顔をしていました。目撃してしもうた……。

 ともあれ、これで任務は完了です。始まるまでの時間、お花柄のテーブルクロスをひいたり、本を並べたり、大き目のポストイットにらくがきをしたりとキャイキャイと楽しく過ごすわたしたち。

 しかし、一つ気になることがありました。我々と同じテーブルを使う左のおとなりさんが来ないのです。

 スタッフのひとも、「ここのスペースの人が来たら、見本誌に見本誌票貼って、この紙持って来るように伝えてくださいね」とぺたんとA3くらいの紙を貼っていったりしています。

 うーんうーん来ないのかなー。寝坊したのかなー。

 どうやら人のことを心配できるほどには回復した私。はっきりいってそんな立場では全くないのですが「目標五冊」というやる気の無い私たちにとって、もう実質コミケは終わったも同然なのです。

 ともあれ、留さんがくれた飴をなめながら、我々はコミケが始まるのをのんびりと待ったのでした。ほえー。

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