140字小説まとめ その4
「結婚おめでとう」「うん。初対面の時ヘマして第一印象最悪だったのに」「かえって次からの印象が『思ったよりいい人かも』とプラス続きになったりするんだよ」「へえ」「変に最初良くしようと頑張ると、次からは『思ったほどじゃない』とマイナス印象が加え続けられたりする」「怖い」#140字小説 恐怖とはありえないことが起こる事だ。昨日死んだはずの母がお茶を飲んでいる。5年前に死んだシロが遊んでいる。男を作って出て行ったはずの妻が裸エプロンで台所にいる。目を閉じて絶叫すると、恐怖たちは消えてなくなった。部屋はいつもの孤独な場所に戻り、そして僕は涙を流した。#140字小説 「僕の初恋は、幼稚園で一緒だったメムちゃんだ。どこへ行くにも一緒で、僕たちは本当に好きあってた。今でも本当に好きになったのは彼女だけかもしれない」この話ができるのも、僕が中学生ぐらいまでだった。その後僕に世間はこう言い放った。「ロリコン」「ロリコン」「ロリコン……」#140字小説 僕の彼女は雪女だ。雪山で遭難したときに出会った。僕は彼女と暮らすことにした。北へ北へ。雪が追ってこないほど北へたどり着いた。しかしそこで雪男と遭遇し、彼女はそちらへ気持ちが傾いてしまった。別れて呆然と人里へ戻ると、僕は単独徒歩で北極点到達を叶えた英雄になっていた。#140字小説 なんとなく、顔を見れば分かることは誰にもあると思う。何故か突然、やってもいない収賄の容疑をかけられ、閑職に干されて、僕のほかはたった一人の部署になり、そのたった一人の同僚の笑顔を見て分かったのだ。「これからいっしょの部署ですね!」彼女が僕を陥れたことを。#140字小説 うちの弟は天才だ。学校の成績もトップだし、大学の教授に見込まれて論文なんかも投稿している。ただ天才とは不安定なもので、よく理解できないところもある。特に心配なのは、ペヤングのキャベツで全ての野菜の栄養が足りていると思っているところだ。弟よ、ペヤングは完全食ではない。#140字小説 「パンダのどこが可愛いんだ」「白黒のとこ」「ならシマウマでも一緒だろ」「でもパンダがカラフルだと変だし関係あると思う」「じゃあ俺が白黒でも可愛いか」「白黒写真って格好良く見えることあるよね」「俺も白黒だと見栄えが良くなると」「それはシマウマと同じで人による」「……」#140字小説 「また友達と出かけるのか」「行くって言ってた映画いつ行くんだ」「仕事仕事って、お前の会社おかしいんじゃないか」彼氏の言葉に私も一々怒っていたけど、「ごめんね、貴方とは明日ずっと一緒にいるから」と言ったら機嫌が治る様になった。訳すると全部寂しいってことだったようだ。#140字小説 「踊りは素晴らしい。楽しいし身体にもいい。音楽に合わせて皆と踊る喜びは代えがたいものです」「デメリットは無いんですか?」「多少アホに見えることかな。でも踊るべきです。アホになってこそストレスは解消されるのです。アホ大事!」「(共感はするけどこの人に習うかは迷うな)」#140字小説 「俺と猫どっちが大事なんだ!」「猫は文句を言わないし、猫優性」「俺は物とか運べるし!」「猫のほうが見た目が可愛いし」「俺は病気になっても安い」「最近はペットの保険もあるよ」夫は思ったよりも猫優性なことに危機感を覚えたか、最近片付けとかしてポイントを稼ごうとしている。#140字小説 「僕と結婚してほしい」「私の夢を叶えてくれたら」「何でも言ってくれ!」「阿寒湖の天然マリモで作った指輪が欲しいの」「任せとけ!」容易い夢だと思ったが、特別天然記念物なので法を侵す上に罰金を取られるようだ。僕に法を犯させようとする彼女と結婚すべきなのだろうか。#140字小説 うちの妻は可愛いし優しいのだが溜め込むタイプで突然大爆発する。新婚当初は分からなかったが長年観察してきた結果、ストレスの溜まってきた段階を判断できるようになった。お湯を沸かす時、ガスの火を何十秒もずっと見つめていたら優しく食事に誘って話を聞いてやらなくてはならない。#140字小説
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