140字小説まとめ その2
「君にはひきこもり離脱の一環として、3日間部屋で娯楽なしの生活をしてもらいます」「……わかりました」「辛いだろうけど頑張って」 3日後。「3日間、何をしてた?」「イチゴの種の数を数えたり、ブロッコリーの蕾を数えたりしてた」「(ヒマつぶしが違う方向にシフトしてる)」#140字小説 「香りがよく、咳を鎮めます。胃にも良く、冷え症や食欲不振などに使われます。だから僕が持ち歩いても、全く問題はないと思います」「うん。よく勉強したのは偉い。だけどな、みかんの皮が漢方薬で使われるのは乾燥したもので、君のランドセルの底で白くカビているのは確実に何か違う」#140字小説 「今度猫飼うことにした」「彼氏諦めたの? 病気時とか一人だと寂しいよ」「えー私は瓶の蓋が開かない時とかぐらいしか必要ないな」「いやそれがいい。猫はお金貸してって言ったり怒鳴ったり殴ったりしないじゃん」「(正しさ云々ではなく、人の意見は人生経験によって違うのだな)」#140字小説 「お母さん信じてくれないだろうけど、僕は昔、世界を救うのに失敗したんだ」「失敗してどうなったの」「失敗前の未来では、もう少し景気がよくて、税金もこんなに高くなかったし、社畜って言葉もなかったし、お母さんも違う男の人と結婚してた」「……なんて取り返しのつかない失敗を」#140字小説 「俺は未来のお前だ。お前は寝坊して明日面接に遅刻する」「なんと」「睡眠薬を使ってすぐ寝るように」 しかし薬が効きすぎて結局遅刻した。彼はその後もたまに来たが、あんまり未来は変わらないものらしく、ついには「最近未来はどう」など、たまに仲良く話すだけの間柄になっている。#140字小説 「ああ神様。私の魂を差し上げます。どうか彼と恋人になれるように力を」「人間よ。もしもお前の気持ちが真実ならば叶えよう」「もちろん真実ですとも」「ではこの、彼を24時間隠し撮りした秘蔵映像を見てみろ」 一時間後。「私の愛は真実ではなく幻でした」「では人間よ、さらばだ」#140字小説 「子供が、夜寝なくて大騒ぎするの」「とにかく疲れさせなさい。運動させて、プールに入れて、お風呂に入れて、スパゲティ大量に食べさせれば寝るから」 その夜。「ああ子供がやっと寝た……」「ただいまあ! ああ残業疲れたわー!」「ギャー!」「……あなた、スパゲティ食べる?」#140字小説 「おかあさん結婚して~」「えー、このあいだ告白してた保育園の松下先生は?」「あいじん~」「アイドルのリンちゃんは?」「ひみつのこいびと~」「さくら組のアイリちゃんは?」「ともだちのこいびと~」「……ごめん。お母さん、やっぱり結婚するなら女性関係に真面目な人がいいな」#140字小説 「彼氏に振られた。死ぬ」「私は神からの使い。死ぬ前にこのDVDを観なさい」「新刊出す! 人生めっちゃ楽しい!」「最近萌え神が忙しいから手伝えとさ」「俺たちもBLを布教するのか」「アニメとかでもいいらしいぞ」「声優名鑑も頭に入れろということだ」「最近天使難しくて辛い」#140字小説 「組織を裏切るとはな」「殺すのか」「改造手術でお前の腕を猫のおててにする。可愛いし恥ずかしいし二度と社会生活は送れまい」「ギャー!」今は運よく肉球を気に入った女性が養ってくれている。だが俺も猫も基本何の役にも立たない存在だなと感じ、自分にできることを模索している。#140字小説 「お前は俺の親友だ。殺したくはない」「昔の話だ勇者よ。僕は手に入れたこの膨大な魔力でこの世界を凍らせてやるのさ! くらえ!」 ザワッ。「……温暖化」「……温暖化」「温暖化!」「え?」「北極へ連れて行けー!」「ギャー!」「(殺されるより面倒な目にあいそうだな)」#140字小説 「ママー、手作りのみたらしだんごって食べてみたいな」「どれだけ大変か知ってる? 上新粉を熱湯で練って、練って、練って、蒸して、それをついて、ついて、つくのよ! それを等分に丸くし! 串に刺し! 焼き! タレを塗り焦がさないように!」「あああお母様二度と言いません!」#140字小説
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